未だに目に見えるモノ以外に対価を払いたがらない人がいるが、それは店のモノを『タダで持っていくよ』と言ってるのと同じでしょ!
タイトルの通り。私は最近この手の話はないのですが、私の周りでたまに聞く話。
この手の話を聞かされる度に、内心イライラしています。
昔ほどこういった話は聞かなくなったのですが、日本人というのは目に見える形のモノを売ってここまで成長を遂げた文化があるので、未だに目に見えないモノやサービスというものに対価を払うと言う文化が根付いてないのだなぁと改めて思っています。
高度経済成長期の真っ只中にいた人達の世代が特にそういう考えの人が多いなぁと思いますね。
私のメインの仕事はコンピューターソフトの設計・開発エンジニアだったり、それらのソフトウェアの運用や保守に携わったり、時にはPCやスマホなどの使い方やトラブルの相談を受けたり、最近ではブログの立ち上げ相談などちょこちょこ。いわゆるクルマや電化製品、アパレルなどの目に見える商品・製品ではなく、目に見えないサービスにカテゴライズされる仕事であります。
私に限らずそういう類の仕事についている人は、あまりPCやスマホに明るくない人達から相談されることも多いのですが、困るのが例えばトラブルがあった時に『これちょっと見てくれないかな?』と相談されることなんですよね。
何故困るのかというと、その『これちょっとみてくれないかな?』の意味は、暗黙で『これタダでちょっとみてくれないかな?』と言ってるのと同義語なんですよね。言ってる本人からすると。
こういう話を聞くたびにちょっと待ってくれと思うんですよ。こっちは趣味でパソコンやスマホ好きではなくれっきとした商売でやってるんですが、未だにこの手のIT機器に明るい人間は好きな趣味でやっているオタクレベルに思われているのか、対価を払うほどのものではないという認識を持っている感じが伝わってきます。
かくいう会社員時代もそういう話はつい受けてしまっていたのですが、フリーになってからは止めるようにしました。
結局それをタダで受けてしまうということは、タダでやってあげる程度の仕事でしかないと言ってることになってしまうから。
でも実際はそんなことはないわけですよ。例えば売店にいってガムを手に取って『これタダで貰うよ!』といって店員であるあなたははいとは言わないですよね?もちろん買うほうもタダで貰って行くなんて普通は言わないと思います。何故ならそのガムにはガムの材料費やら作った人の給料やらガムを作る工場の土地建物設備代などがコストに含まれていて、そこから利益が出るように売られているわけです。(実際はそんなに単純な話ではないですが、分かりやすい形として書いてます)
買う方はその価格に納得してるから何も言わずにお金を出すわけです。
それと同じく、PCのトラブルを診断して解決するにも、例えば会社からその場所まで1時間かかるとしてそこまで行くまず交通費が発生します。そしてそのトラブル診断をして解決するだけの時間を使うわけです。さらにそこまで行く時間も使うわけですから、その時間内の労働力そのものが発生します。さらにそれらを解決するための知識や経験というものは同じような機器やアプリを買ったり参考書やマニュアルを買ったりして検証したりしています。それらも当然の事ながら多大なコストが発生します。ここまで書けばわかると思いますが目に見えないサービスにも目に見えるモノと同じくコストが発生しているのです。
つまり、PCのトラブルをそれを生業としている相手に気軽にタダでやって貰おうというのは、コンビニのガムをタダで持っていこうという行為に等しいことをしようとしているということを認識してもらいなと思います。
大体この手の話を受けて、お金がかかるとおもむろに不愉快そうな顔をする人がいますが、払うのがイヤならば自分でやればいいと思っています。逆に自分で出来なくて困っている、もしくは出来るけど自分では時間をかけられない等の理由で頼むのでしょうから、それ相応の対価が発生するのは当然のことでないでしょうか?
例えば、あなたが経理に明るい人間だとします。そして私の会社の経理…私はつい領収書とかを溜め込んでしまいますが、それらを処理している時間が勿体無いので、そういったことが得意な人間にやって貰おうと思っています。そしてあなたにタダでやってくれないか?と依頼します。あなたはこれを引き受けますか?それと同じ事です。
ただ我々の業種に限って言ってしまえば、サービスを提供する我々側にも問題はあると思っています。一番はそのサービスの価格をハッキリさせていないところも多々あり、消費者にそのサービスの価値をわかりにくくさせているところは改善していかなくてはならないのではないかと思います。ちょっといい訳っぽくはなりますが、やはり目の見えないものには値段を付けにくいなと思うのは、サービスを提供している側が一番思っていることでしょうか…。
この手の話は、我々ITサービスだけでなく、特に絵画、写真、音楽といった芸術関係のサービスにもよく耳にしますね。私も写真をやるようになってから写真家を始め芸術関係の方々からの話を耳にするようになりましたが、プロの方に対して平然と写真を無料で提供してくれという話やイベントを開催するのでタダで演奏してくれないかなどと言った話を耳にします。
恐らくそういった分野に興味があまりない人は趣味の延長線ぐらいなことをやってるぐらいにしか思っていないのでしょう。しかしそれが好きな仕事だろうが、そうでない仕事だろうがどんなものにもコストはかかっているのです。
対価を払うまでの価値があるかどうかは人それぞれの価値観の自由なので、どうこう言う話ではないですが、どんな仕事もボランティアだけでは成り立たない。それ相応の対価がなければ仕事として続けていくのは困難だということを認識してほしいなと思います。
ちょっと過激な言い回しになったかもしれないですが、この仕事に関わっていて長い間モヤモヤとしていたことなので、思い切って自分なりの考えを書かせてもらいました。
こういった目に見えないモノやサービスにも、全うに対価が支払われるそんな世の中が一日も早く来ることを願いたいものです。