誰でも簡単に撮れる!工場夜景撮影のポイント | これから始めるデジタル一眼
私の家のある川崎は、御存知の方も多いかと思いますが全国でも有数の工業地帯。
昼間は工場から排出される匂いや、ひっきりなしに通るトラックの排気ガスと合わさってとても長時間その場にいるのはキビシイ環境ですが(ここで毎日仕事をしている人達は、体調とか大丈夫なのかなと思ってしまいます)、辺りが暗くなり人やトラックの行き来も少なくなってきて、工場がライトアップされると昼間とは打って変わって幻想的な世界が広がります。
最近では船上から見る工場夜景ツアーなどが開催されて、工場夜景がひそかなブームとなっていますね。
この工場夜景の写真を見るたびに私もこんなの撮ってみたいなと思っていたのですが、考えても見たらいつでも撮ろうと思えば撮れる環境にいるでないか!と気付いたのが最近のこと。自転車でものの20~30分もあれば本や雑誌で出ている撮影スポットに行けるんですよね。
ということでミラーレス一眼を持って初の夜景撮影にチャレンジしてきました。マイクロフォーサーズ規格のミラーレス機を基準に書いていますのでデジタル一眼レフやハイエンドのミラーレス機には一部当てはまらないところもあるかもしれませんが、2度ほど撮影してきて初心者なりに気付いたことをまとめてみます。
必ず持っていくもの
当日必要なものですが、カメラとレンズ以外に何を差し置いても必ず持って行かないとダメなものが一つあります。
それは三脚。
工場夜景撮影をする場合、ライトアップはされているもののあたりは真っ暗ですから、日中の撮影のように早いシャッター速度が使えません。(使っても真っ暗で何も写りません)そのため長時間露光といって、数秒から2、30秒ぐらいの遅いシャッターを使うことになります。
これだけの遅いシャッターを使うと、当然の事ながら手持ちでの撮影では、ブレブレの何を写したのかわからないような写真になっていまいます。
それほど高価な三脚を用意する必要はありませんが、工場夜景は海沿いにあることが多く、普段でも風の強い場所であるので、ある程度脚がしっかりした三脚を使うようにしてください。私のはVelbon Sherpa ActiveⅡという実売で一万程度のモノを使っています。木枯らし吹き荒れる季節ではちょっと頼りない感じがしますが、今ぐらいの時期から秋までなら十分という感じです。長さは自分の背丈ぐらいまで伸びるものがあれば十分です。
持っていったほうがよいもの
必須と言うわけではないですが、ないとちょっと困るぞというものをここで挙げてみます。
- レリーズ
三脚でカメラを固定しているので手振れの心配はないのですが、意外と盲点になるのが、シャッターボタンを押した時わずかに発生するブレ。実は私もこれは何度もやってます。
コレを回避するには、直接カメラ本体のシャッターボタンを使わず、レリーズと呼ばれるリモートシャッターを使うことです。
純正品でもサードパーティー製でもお好みで。サードパーティー製なら1,2千円から売ってます。
万が一レリーズを忘れた場合には、セルフタイマー(2秒とか)を使うようにすればシャッターぶれを回避することができます。
- 水準器
私もそうなのですが、初心者に多いのが微妙に傾いた写真。これって意外とファインダー越しに見ている時って気がつかないんですよね。個人的にクセ見たいのもあって水平にしているつもりでも傾いていたり、私の場合は常に右側が上に傾くクセがあります。
日中ならある直線になっている部分や、いくつかのポイントで水平に合わせることができるのですが、夜間はそもそも基準すべき対象物が見えないため、この水準器がないとエラい苦労することになります。
私の所有しているOLYMPUS PEN E-PL3は古いのでこのようにシューに水準器を差し込んで使ってますが、最新のミラーレス一眼はデジタル水準器を内臓していてガイダンスから確認できるようになっているので、そちらの機能を使うとよいでしょう。
- 懐中電灯
工場の明かりや道路の明かりが照らしているところはよいですが、ちょっと広い道を外れたりすると急に辺りが暗くなってカバンの中のものを見つけるもの難儀するので、懐中電灯は持っていったほうが良いです。このような場所に一人でいるとかなり怖いものがありますから、目の前に照らす明かりがあったほうが安心感がありますし、防犯の役目も果たします。
さらに不審者と思われる確率も下がりますし、日が暮れた時間とは言え、まだトラックや工場関係者の車がそれなりに行き来していますから、自分の存在を分かるようにしておいたほうが思わぬ事故に巻き込まれる事の回避にもなりますので、出来るだけ持っていくようにしてください。
- 飲み物
撮影場所までの移動中、撮影中は意外とノドが乾きます。(周辺の空気の悪さもあるのだと思いますが)近辺に飲み物を買うところが無いところも多いので、あらかじめ買って現地に持っていくようにしたほうがいいでしょう。
- 虫除け
自然の中での風景撮影や花火の撮影のように、虫が多いところではないので神経質になることはないですが、まったくいないというわけではないので、虫刺されが気になる人は持っておいたほうがよいでしょう。
その他の心構え
持ち物以外で、工場夜景を撮影する上で気にしておいたほうがいいポイントを挙げます。
- 初めての場所は日が出ているうちに現地に着いておく
その撮影スポットには、本や雑誌などで紹介されていて来たという人が多いと思いますが、実際にその写真がどの辺りから撮ったモノなのかまずわからないですよね。その撮影場所の周辺がどのような場所なのか事前に把握していないと、最悪撮影することすらままならなくなります。
被写体と自分が撮影する場所、そしてその周辺の状況を把握するには、日が落ちる前に確認しておくことが大事になります。構図を決める場合にも、暗くなってからファインダー越しに覗いてもわかりませんから、日中のうちに撮影をしてある程度構図を決めておくと夜になってからスムーズに撮影ができます。
- 女性の単独や女性同士ではあまりオススメしません
撮影に没頭している時は気がつかないんですが、ふと我に返ると怖いんですよ。辺りは人も車もめったに来ないですし、撮影に夢中になっていて後ろから襲撃されても気がつかないだろうなと思うと、たまにゾッとします。
そもそも人が少ないところなので、何も起きそうもないところとも言えるのですが、逆に言うとよろしくない人達が集まりやすい場所でもあるわけで、万が一のことがあってもリカバリーが困難な場所であることを認識しておいてください。
- 帰りの交通手段や駐車場の有無をチェック
工場夜景スポットは一般的に交通の便が良くないところが多いです。車で来る場合は駐車場等をチェックしておきましょう。近くに駐車場がなくやむ負えず路肩等に停める場合にトラックが頻繁に行き来するような幹線道路に停めることはしないようにしましょう。トラックが待機しているような交通料の少ない枝道でも、邪魔にならないよう速やかに撤収できるようにしておきましょう。
公共交通機関を利用して来る場合は、あらかじめ帰りの時間を調べておきましょう。バスなどは意外と早い時間に終わってしまうところも多いので、帰りそびれたりしないように帰り時間から逆算して予定を立てるようにしましょう。
- 立ち入り禁止区域には入らない
以前は立ち入り出来た場所が立ち入り禁止になったり、無かったはずの柵が設けられたりという場所が増えてきたようです。私の撮影スポットもそのような状況になってました。保安上・機密上の問題もあるとは思いますが、恐らくルール・マナー違反を犯すものが多かったための措置でもあるのでしょう。こうして撮影スポットが一つ一つ消えていくのは残念なことなので、工場は撮影するための場所でないということを認識した上でルールとマナーを守って撮影を楽しんでください。
撮影のポイント
ここまで前置きが長くなってしまいましたが、実際の撮影の話に進みたいと思います。
今回行った場所は、川崎の浮島にある東燃ゼネラル石油 川崎工場前と、千鳥町にある日本触媒 川崎製造所前。
下の写真が、東燃ゼネラル石油 川崎工場。
マニュアル露出 WB:白熱灯(3000K) ISO200 f8.0 13秒 +1.0EV
上記の写真をAdobe Photoshop Lightroomでレタッチ
次の写真が、日本触媒、川崎製造所前。
絞り優先オート WB:白熱灯(3000K) ISO200 f8.0 6秒 +1.3EV
いずれも2回目に撮りに行った時の写真ですが、ヘタなりにも工場夜景って思ったより簡単にそれっぽく撮れるんですよ。この日は水準器を忘れるという痛恨の凡ミスをやらかしたんですが、なんとか目立った傾きもなく撮ることが出来ました。
ちょっと日本触媒の工場の方に入った時間が遅くて、手前の向上のライトアップが消えてしまったのが非常に残念。
1回目の撮影の失敗も踏まえて、わかったことや実施したポイントを書いていこうと思います。
- 使用レンズは標準ズームでも十分だが…
使用するレンズは今回のように比較的距離が近い場合、24mm~105mm相当の広角域から中望遠をカバーする標準レンズがあれば十分です。しかし、工場の近辺は立ち入り禁止区域も多く、離れた場所からの撮影も多くなります。また、埠頭の対岸からといった遠距離からの撮影や工場の中をクローズアップした撮影をする場合などのケースになると、200mm~300mmクラスの望遠ズームが必要になるでしょう。
- ピント合わせは基本オートフォーカスで問題なし
私は今回MF(マニュアルフォーカス)をメインに使ってましたが、基本的にAFでもまったく問題ありませんでした。
私の古いE-PL3ではたまに迷うことはありましたが、きちんと合焦はしてくれます。最新の機種のAF機能ならまったく問題ないでしょう。
辺りに明るいところがなくて、どうしてもAFでは合焦してくれない時にマニュアルフォーカスを使うとよいでしょう。最近のデジカメはマニュアルフォーカス時にフォーカスポイントを拡大してくれる機能がついているので初心者でも簡単にマニュアルフォーカスでピントを合わせられるのがいいですね。
- 露出は絞り優先オートかマニュアル露出で、測光モードは分割測光
マニュアルでやったほうがいいという人と、絞り優先オートでいいという人と分かれるんですが、結論からいうとどちらでも問題ないかなと思いました。
絞り優先だと若干アンダー気味になりますが、露出補正でどうにでもなるレベルなので、慣れない人は絞り優先オートでいいと思います。
マニュアルでもこのシチュエーションではシャッター速度は10秒~13秒、仕上がりは若干アンダー目になりますが、露出オーバー気味で白トビの箇所が多くなると、後の補正が効かなくなりますから、ちょっと暗いかなと思う程度でいいかと思います。
測光モードは初期値である分割測光のまま変える必要はないと思います。
- F値は8~9ぐらい
工場夜景ですと、全体的にフォーカスが当たって前後にボケがでない、いわゆるパンフォーカスな写真になるかと思います。普通に絞り込んでいけばいいのですが、問題はどれくらい絞ったらいいかというところだと思います。
私が撮影した感じではF8ぐらい絞れば十分かなという感じです。
APS-Cやフルサイズの一眼や望遠での撮影でしたらもう少し絞ってもいいのかなと思いますが、マイクロフォーサーズではあまり絞りすぎてしまうと回折現象というのが発生し、全体的にシャープさが損なわれていきます(小絞りボケ)回折現象についてはここでは説明しませんが、絞れば絞るほど、全体的にぼやけた感じの写真が出来てしまいます。特に撮像素子の小さいサイズが多いミラーレス機やコンパクトデジカメではこの現象で出やすい傾向にあります.
もともと自然風景写真と違って、被写体の距離が近い距離に固まっているので、必要以上に絞り込むこともないでしょう。
これは別の日に撮影したものですが、F16まで絞り込んでいます。上の画像と一見変わらないように見せますが、拡大すると明らかにシャープ感が損なわれているのが分かります。
また赤い丸がついたところにゴーストが発生してます。さらに全体的にライトの光が丸ではなく楕円に形が変わってきてます。これらも絞りすぎによる影響によるものです。(楕円になるかはレンズの特性によるところも大きいので必ずしも起きるものではないです)
コレも絞りすぎによる失敗例。スローシャッターならではの工場の煙がいい感じなだけに残念。
- 画像フォーマットはRAW形式で保存
先程も暗めの写真が出来ても後で補正すればいいや。という話がありましたが、通常ミラーレスも含めたデジタル一眼カメラはおなじみのJPG形式のほかに、RAWフォーマットという形式で保存することができます。これは撮影した撮像素子を通して入ってきた色情報をそのままデータとしたもので、JPGなど誰でも見れる画像形式になる前の状態です。
JPG形式ですと後で補正をかけたりすることが難しいこともあったり、補正をかけたりすると画質を落としてしまいますが、RAW形式ですといわゆる現像前のデータですので、画質を落とすことなくさまざまな補正をかけることができます。
ファイルサイズも大きくなりますし、そのカメラメーカーの専用のソフト(だいたい無償)やPhotoshopなど限られたソフトが必要になりますが、いざ補正ができるというのは安心感にもなりますので、カードの容量に余裕があればJPG形式とRAW形式の両方で保存するとよいかと思います。
- ホワイトバランスはお好みで
RAW形式で保存すれば、ホワイトバランスも撮影後に自由に変更ができるのであまり気にすることなく自分の好みでよいかと思います。私は工場の冷たい雰囲気を出したいので白熱灯(3000K)で撮影することが多いです。
上に挙げた白熱灯以外に、ホワイトバランスを変えた写真を載せます。
まとめ
今回2度にわたり工場夜景撮影に挑みました。最近、花火撮影で大失敗したのもあってさてどうなることやら…と思いましたが、意外にも簡単にそれなりの写真が撮れたかなと言うのが感想です。
まだまだ構図の取り方とかインパクトのある写真作りに課題が山積みですが、綺麗な工場夜景を取ること自体はそれほど難しいものではないことは分かりました。
必要な道具を揃えたり、時間や手間が少し掛かりますが、逆にその少しの手間隙をかければこれくらいの写真は誰にでも撮ることができます。
工場だけでなく、夜の港町や高い場所からライトアップされた街並みなどの撮影にも生かせますし、夜の長時間露光撮影はデジタル一眼カメラの楽しさを広げてくれること間違いなしです。
これから秋冬と夜の時間も長くなり、空気も澄んで綺麗な夜景が撮れる季節になりますから、夜景撮影デビューしてみてはいかがでしょうか。