映画 ヴィヴィアン・マイヤーを探して を鑑賞して思ったこと
先週末、久々に映画を見てきました。
『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』という長編のドキュメンタリー映画です。
このタイトル名にもなっているヴィヴィアン・マイヤーって誰?って思う人が大半だと思いますが、写真愛好家の中ではかなりの人が聞いたことある名前じゃ名前でしょうか。
このヴィヴィアン・マイヤーという女性写真家?もう既にこの世にはいない人物なのですが、今一番ホットな写真家であると言えるかもしれません。
写真家のところに?マークを付けたのは、実は彼女、生前は写真家としてこの世に知られた存在ではなく乳母として生涯を終えた人なのです。
彼女が写真家として脚光を浴びたのは、没後の2007年、シカゴ在住のある青年がオークション会場にて、彼女の遺品ともいえる大量のネガを手に入れたことから始まりました。
この青年がネガをデジタル化してネット(ブログ)にアップしたところ大賛辞の嵐。そしてこの発見を主要メディアが絶賛。あれよあれよと世界中に広まり発売した写真集は全米売上No1を記録。NY・パリ・ロンドンでの展覧会も大勢の人が押し寄せるという、まさに映画のような夢のストーリーが現実のものとなっています。
私も彼女の写真集を持っていますが、いや本当に素晴らしいの一言。
と同時に、生前一度も自身の作品を公開することなく人知れずひっそりとこの世から去っていった彼女。どのような思いで未現像のフィルムも含めると15万点以上にも上る写真を撮り続けていたのか?写真家として世に出たいと思わなかったのか?撮った写真を人に見せたいと思わなかったのか?その心の内も含め、謎に満ちた人生にとても興味が湧いているところへのタイミングで、彼女の人生の軌跡をドキュメンタリー化した映画の上映ということで早速見に行きました。
見に行った映画館は渋谷・宮益坂上にあるシアター・イメージフォーラム。
イメージフォーラム・ダゲレオ出版/シアター・イメージフォーラム/劇場案内・会員制度
駅の近くや大規模商業施設にあるような大きな映画館でなく、いわゆるミニシアターで上映しています。
『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』はこちらのシアター1(64席)で上映中。
私は日曜の17:15分の上映に行きましたが、64席あるうちの40席以上は埋まっている感じ。思ったより見に来る人多いなぁと。ちなみに見終わった後も、最終時間の19:15分から見に来た人達で映画館の入り口受付あたりは人が溢れかえっていて、意外と?この映画の存在って知られているのだなとちょっと驚きでした。
映画の内容は、実際に見て貰うのが一番かなと思うので詳しい内容はここでは書きませんが、タイトルからも想像がつく通り、この謎に満ちた彼女が生前どのような人生を送ってきたのか、この世紀の大発見をした青年=ジョン・マルーフが生前ゆかりがある人達を探し当て、解き明かしていくというストーリ。
それで、自分が抱いていた疑問。彼女は何のために撮り続けたのか?写真をこの世に広めたくはなかったのか?という疑問は見た後もますます深まるばかり。。。
ただ、自分が思うに、やはり彼女は自分の写真を人に見て貰いたかったのではないかなと、この映画を見て思いました。きっと自分の撮る写真に自信はあったのだろうなと、映画の中で伺わせる描写あったり、未現像も含めてこれだけの写真を残しておいたりと。。。ただ、映画を見て貰うとわかるのですが、彼女はモノ(古新聞など)をやたら取っておいたり収集癖のような部分もあったりで、それは写真も含めて自分の生きてきた足跡みたいなものを残しておきたかった、伝えたかったというのももしかしたらあるのかな?といろいろ考えていると謎は深まるばかり。
そして、驚くことにこの映画。実はこの世紀の大発見をした青年、ジョン・マルーフが自ら監督をした作品なのですよ!彼女の作品をこの世に広めた者として、彼女の生前の謎に迫りそれを作品を見る人達に伝えていく事が使命と感じてこの映画を製作したのかもしれませんね。それだけの思いがこの映画には込められている、そんな気がしました。
そして、もしかしたらこのような形で自身の写真を世に広められていることを一番望んでいたのはヴィヴィアン・マイヤー自身だったのかも知れない。本場アメリカンドリームの舞台と言えど、一介の乳母で決して裕福とは言えない生活を送っていた彼女にとって、写真家になるというのはやはり自分にとって夢のような世界でしかないと考えていたのかなと。。。
もしそうだとしたら、あの世でしてやったり!と思ったりしているのかもしれない。現実主義者の私ですらちょっとロマンのある思いに馳せたくなる、久ぶりに見ごたえのある映画でした。(実は映画久々過ぎて少しウトウトしてましたがね(^^;;)
東京での上映はこのシアター・イメージフォーラムのみで上映中。
他県でも順次、上映開始しているようなので、詳しくは映画の公式サイトをご覧ください。
写真愛好家だけでなく、人生とは何か?を考えさせられる作品なので、特別写真好きではなくても十分見応えのある作品。近くで上映しているようなら是非映画館に足を運んでみてください。